劇団四季のオーディションについて知っておくべきこと
ミュージカルのオーディションと言っても、いろいろな実施の仕方があります。
オープン・コールと呼ばれる、いわゆる一般公募のオーディション。
こちらは、どちらかといえばアンサンブルを中心としたキャストを探す目的と、世間一般にそのミュージカルの存在を知ってもらう前宣伝の役目も果たします。
一方で、一部の芸能事務所やダンス・スタジオ等にだけ情報が流れる、クローズドのオーディション。
こちらは、ある程度のキャリアや知名度を持つ人たちを対象に、メイン・キャストを中心とした、いわゆる役付きを前提にして行われるオーディションがある多いようです。
ミュージカルの場合、歌にダンスにお芝居にと、いろいろなスキルをオーディションで審査する必要がありますよね?
そのため、台詞だけのオーディションや、ダンスのみのオーディションと違って、どうしてもオーディション自体に時間がかかります。
というわけで、ある程度審査対象の役に必要なスキル(この役は歌がメインとか、ダンス力が欠かせない、など)がハッキリしているものについては、芸能事務所やダンス・スタジオに、「こういうスキルを持った、このぐらいの年齢の、背格好の、男性(もしくは女性)を探しています。」といった情報を前もって知らせた上で受験者を募るのです。
そして、オーディションではスキルと合わせて「この役のキャラクターに合っているかどうか?」といった個性も合わせて審査するわけです。
アンサンブルのオーディションの場合、受験者数が多いと、まずダンスか歌のどちらかを審査して、そこで一度合否を出して人数を絞る場合もあります。
それでは、劇団四季のオーディションはどうでしょうか?
劇団四季のオーディションの場合、大きくわけて二つの受験の仕方があります。
一般コースか、研究生コースです。
大まかな基準で言えば、一般コースは既にミュージカルやストレートプレイのプロの舞台出演経験がある人で、劇団四季の作品に即戦力として立てる能力を持つ人が対象です。
研究生コースは、歌やダンスのレッスン経験や、クラシック・バレエなど特定の分野では出演経験があっても、現時点で“劇団四季の作品に即戦力として立つ”までの力はないであろう人が対象となります。
中には、海外の有名なバレエ学校で学んでいたような人でも、歌や演技の経験がなければ、研究生としてのスタートとなるケースも。
特定の作品の上演を前提として行われるミュージカル作品のプロデュース公演のオーディションで審査するのは、受験者の“今”が最優先であって、未来や可能性ではありません。
しかし、劇団四季の場合はロングランを前提とした上演作品の数々に、“近い将来出演できるようになる人”まで含めた審査をしているはずです。
この点が、劇団四季のオーディションの大きな特徴ではないでしょうか。
もちろん、審査内容に将来の可能性が含まれるからと言って、今は歌も踊りもできなくていいというわけではありません。
歌にしろ踊りにしろ、根気強くトレーニングを続けなければ、作品のメッセージを観客に届けられるまでのものが身につくはずはないのですから。
ただ、いわゆる、シンガーやダンサーが「次の仕事を取りに行く」オーディション以上の何かが、劇団四季のオーディションを受験することにはあるのだと考えられることが大切なことのように思います。
「今」のためだけではない、「自分」のためだけではない、「この先出会う誰かのため」に。
そんな考え方のもとに、日々のレッスンに精一杯の努力をし、しっかりと未来をみつめてオーディションに臨む。
そんなあなたの姿に、可能性を感じる人がいるのです。