劇団四季に入るには?~オーディション合格への道

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劇団四季の演技メソッド

劇団四季のメソッドについて知っておこう〉

劇団四季の演技メソッドとして有名なのは「開口発声」「母音法」ですが、その他にも「呼吸法」「フレージング法」と呼ばれる方法論があります。

 

〈呼吸法〉
台詞(セリフ)や歌で声を出す為に呼吸が大切なのはなんとなく想像がらできますし、激しいダンスを踊ることはアスリートにも似た運動量が要求されるわけですから、呼吸のコントロールは重要です。

 

ただ、劇団四季の場合、更にその上に呼吸のコントロールが絶対的に必要とされる理由があります。

 

それは・・・


「ロングラン公演が前提だから」

 

週に8回、9回といった本番を何カ月も、場合によっては何年も続け、その間、

 

毎回同じレベルの舞台を観客に届けるためには、パフォーマンスの土台となる呼吸をコントロールできるようになることが絶対条件

 

となるからです。

 

いわゆる“腹式呼吸”がそれで、

 

横隔膜を十分に動かして深い呼吸ができるようになるまで、繰り返し練習をするのです。

 

昔は、稽古場の床に仰向けに寝て呼吸の訓練を行っていたようですが、ある時期から稽古場の壁にあるレッスン・バーにつかまって、両脇腹の裏側を膨らませるように深く息を吸い込んで、長く息を吐き続けるといったトレーニングがメインになっています。

 

「4カウントで吸って、8カウントで吐き切る」
「2カウントで吸って、8カウントで吐き切る」
「1カウントで吸って、8カウントで吐き切る」

 

というようにバリエーションをつけて、

 

横隔膜を使った呼吸の訓練を毎日毎日繰り返すこと

 

が、俳優としての身体の土台を作るのですね。

 

 

〈母音法〉
俳優が語る台詞(セリフ)には、“情報”と“感情”の2つを観客と共有するという役割があります。

 

そのうちの“情報”としての台詞(セリフ)を、確実に客席に届けるために考え出されたのが、劇団四季の「母音法」です。

 

日本語を音として見た場合、(例えば「おやすみ」という言葉をローマ字に置き換えて「OYASUMI」としてみるとわかりますが)基本的には母音と子音が交互に置かれ、子音単独で発音されることはまずありません。

 

つまり、


「母音が明瞭に発音されれば、情報としての台詞(セリフ)は確実に観客に届く」


ということです。

 

そこで劇団四季の俳優たちは、

 

台本の台詞(セリフ)を全てノートに書き写し、その横にそれぞれの台詞(セリフ)の母音を書き出して、その母音だけで台詞(セリフ)を声に出し、繰り返し練習する

 

という方法で訓練をするのです。

 

母音のひとつひとつが明瞭に発音されるように、口の形を意識しながらハッキリと発音することがポイントです。

 

※実際には、「句読点を省いて書き写す」「折れを作る」という作業もしていますが、この点については「フレージング法」のところで解説します。

 

その際、例えば「お父さん」という言葉のように、文字では「おとうさん」と書くのに、話し言葉では「おとーさん」と母音を繋げて長く伸ばすパターンを“長音”、「きっと」「もっと」のように撥音(はねる音)のパターンを“連子音”(ローマ字で書くとKITTOのように、子音が連続するから)と呼びます。

 

更に、「明日、あなたが…」という台詞の中で「ASHITA:ANATAGA」のように母音同士が連続するパターンを“連母音”と呼びます。

 

こうして、音声(=情報)として観客に届きづらい部分部分にチェックポイントを設けて、俳優自身が自分の語る台詞(セリフ)を客観的に確認できるようにしているのです。

 

〈フレージング法〉
劇団四季の俳優が台本の台詞(セリフ)をノートに書き写す際に、句読点は全て省いて書き写します。

 

それは、


句読点というのは読み書き言葉のためのもので、話し言葉のものではないから。

 

人間は通常、あるひとつの意思(意志)を伝えようとする時には、文章の途中ブツブツと細切れで話すことはありません。

 

ひとまとまりの意思(意志)のかたまりで、ひとつの流れの中で言葉を続けます。

 

(これを浅利慶太さんは、「感情ではなく想念」と表現されています。)

 

しかも、そのほとんどは途中で息継ぎをすることなく、ひと息で話し終えるのです。

 

この、意思(意志、想念)の変わり目(意識の方向性が変わる場所)を、劇団四季では“折れ”と呼んで、台本上に鉤括弧(かぎかっこ)で書き表します。

 

その折れにも大きな折れ(大折れ)や小さな折れ(小折れ)があり、更に、心理的には小さな折れがあっても流れとしては続けて語る箇所は“リエゾンする”などという表現を使って、台詞(セリフ)のフレージングを可視化(目で見えるものに)するのです。

 

もちろん、こうしたメソッド(方法論)は、

 

作品の持つテーマやメッセージ、演出意図などを確実かつ的確に観客に届けるための手段であって、目的ではない

 

ということを忘れないようにしなくてはいけません。

 

ただ感情を前面に押し出して叫ぶように絞り出す言葉は、キチンとした音として成立せずに情報が観客に届かなかったり、ごくごく個人的な感情で複数の人間が共感、共有できる意志や想念でないために観客が感動できなかったり、といった結果になりがちなのですね。


劇団四季のこうしたメソッドについては、浅利慶太さんがお書きになった、

 

劇団四季メソッド「美しい日本語の話し方」 (文春新書)

 

に、詳しく書かれていますから、劇団四季を目指す方は是非読んでおくべきです。

 

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